ラグジュアリービジネスにおいて、エコやエシカルは、一種のトレンドとなっている。
しかしその言葉が独り歩きしてしまうと、結果としてユーザーが興味をもちにくい。
その点オリスは、エコ活動をサポートするだけでなく、それを生かした時計作りやイベントを開き、
“我がこと”として環境意識を持てるような取り組みをしている。
美しい海にかこまれた神奈川県真鶴町は、観光開発が進んでいない分、樹齢300年を超える木々が茂る「お林」など海も陸も美しい自然が残っている。ここに一台のバスがやってきた。これは家庭用から出た廃油をリサイクルしたバイオ燃料を使って走る「天麩羅バス」で、オリスジャパンが参加を募ったエコツアーの参加者が乗っている。
到着するとすぐさまビーチクリーニングがスタート。積極的に動いているのは、このツアーの主催者のひとりであり、オリスのアンバサダーでもあるフリーダイバーの岡本美鈴さんだ。
高級時計ブランドがエコ活動を支援するのは珍しいことではないが、オリスの場合は、参加して楽しむということを重要視している。それは参加者の笑顔を見るとわかる。
「CHANGE FOR THE BETTER」。これはオリスの環境問題に対するスローガンだ。そもそもスイスの時計は隣国フランスから伝わったという歴史があるため、国境に近い自然豊かな山間の町で作られることが多い。時計師やスタッフも田舎で生まれ育った人が多いので、自然はとても親しみのあるもの。そのため世の中がSDGSやサステナブルと言い始める前から、環境意識が高かった。
里山に囲まれた町ホルシュタインで創業したオリスも同様で、数十年も前から環境保護活動をサポートしてきた。もちろんこういった活動は他の時計ブランドも行っている。しかしオリスの活動は、説教じみていないし、肩に力が入っていない。河口にフローティング プラットフォームを浮かべて海洋プラスティック廃棄物を掃除するパシフィック・ガベージ・スクリーニングとパートナーシップを結んだり、海の中を漂う廃漁網(ゴーストネット)を回収してアップサイクルするブレスネットとパートナーシップを結んだりと、規模は小さくとも、未来を見据えて活動している団体を積極的にサポートするのだ。
そしてそういった活動の成果を、時計に取り入れるのもうまい。例えば「アクイス デイト アップサイクル」は、ダイヤル素材に再生プラスティックを使用しているが、そのカラフルな色彩や独特の模様は、エコ活動というフィルターを通さなくても十分に魅力的だ。
エコ活動をブランドからの一方通行にせず、商品力によってユーザーに届ける。だからオリスの社会貢献活動はうまくいっているのだろう。
冒頭でも話した通り、オリスのエコ活動は日本でも行われている。2019年に始まったオリス クリーンプロジェクトは、まずはブティックがある銀座周辺のゴミひろいから始まった。そして賛同者を募ってビーチクリーン活動などもスタートさせており、草の根ながら、その活動規模はどんどん広がっている。
現在のオリスの日本におけるエコ活動のキーパーソンとなるのが、フリーダイビング世界選手権金メダリストの岡本美鈴さんだ。
「2003年からフリーダイバーとしてのキャリアをスタートさせましたが、海洋汚染の状況を目の当たりにしたのは、バハマで行われたバーティカル・ブルーというフリーダイビングの国際大会でした。会場からちょっと離れたエリアの砂浜に行ったところ、足の踏み場がないぐらいプラスティックで埋め尽くされていました。ダイバーたちは環境意識が高いので、海中やビーチの掃除はしますが、結局翌日になるとまたごみが漂着している。拾いながらも、どこかモヤモヤしていた気持ちがあって、それがMarine Actionという海洋保全活動を立ち上げるきっかけになりました。縁あって私は2023年からオリスのアンバサダーを務めていますが、オリスのスタッフと驚くぐらい距離感が近い。スイス時計には伝統がありますし、しっかり時計作りをしてきたブランドですから、話をもらった時は緊張感がありました。でも色々な話をしているうちに、向いている方向が同じで、ちゃんとアクションとして理念を実現している時計ブランドであることがわかりました。オリスにサポートしてもらっていることは、本当に誇りに思っていますし、自然を大事に思っているブランドの姿勢を、周囲のフリーダイバーにも伝えています」
岡本さんとオリスの共同イベントとなった神奈川県真鶴町のエコツアーだが、ビーチクリーニングの参加者は、みんな笑顔だった。その光景に対して、岡本さんはこう答える。
「やっぱり楽しくないとね。それが一番続くし、活動も広がりやすい。せっかく真鶴町でやるなら、美味しいお昼ご飯を食べてほしいし、いろいろな楽しみを組み合わせたイベントにしたい。今回は私たちの提案にオリス ジャパンが興味を持ってくれて、私が拠点にしている真鶴町でイベントを行うことになりました。イベントが実現できたのは、真鶴町の皆さんの協力も大きかったですね。この街はエコ活動に対して協力的ですし、街の人にも喜んでもらいたい。このイベントは、参加者の顔がみえるので、相手の気持ちも受け取れる。それも大切なことだと思います」
東京から真鶴までの移動は、回収された廃食油を再生したバイオディーゼル燃料で動く「天麩羅バス」。ほのかに食用油のいい匂いがするが、トルクや燃費は通常の燃料と遜色はないという。さらにかつて皇室の御料林であったことから「お林」と呼ばれる森を学ぶ「お林」ツアーでは、地元の観光ガイドの方が案内してくださり、その歴史や植生、さらには、海と沿岸部、そしてお林が一体となることで生態系が保たれており、豊かな自然環境を育むことができるという興味深い話を伺うことができた。
美しい自然を守ることが重要であることは、誰もが理解していることだ。しかしこうやって実際に体を動かしていくことで、より身近なこととして考えることができる。オリスは、常にユーザーに寄り添う時計作りをしているが、エコ活動においてもユーザーともに歩むことを強く意識しているのだ。
取材・文:篠田哲生 / Report & Text:Tetsuo Shinoda
写真:江藤 義典 / Photos:Yoshinori Eto
オリス(ORIS) についてのお問い合わせは…
オリスジャパン株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座4丁目3-14 和光オリスビル
TEL: 03-6260-6876
>>>オリス(ORIS)取扱いGressive掲載店舗一覧
>>>オリス(ORIS)公式サイト
※価格は2023年10月27日現在のものです。
※掲載されている情報及び価格は、各ページが公開された時点のものとなり、変更されている可能性がございます。ご了承ください。