スイスの時計産業は、ジュネーブとジュウ溪谷というフランスに近いエリアが中心となる。しかしオリスはバーゼルに近いドイツ語圏の街、ヘルシュタインに拠点を構える。
なぜこの地なのか? その歴史を読み解くと、オリスの哲学が見えてくる。
国際河川のライン川が流れ、フランスとドイツと国境を接する貿易都市バーゼル。そこか電車を乗り継ぎ、最後はローカル線のヴァンデンブルグ鉄道に乗車。のどかな田園を15分ほど走るとオリスの本社と工場が見えてくる。
この鉄道こそが、オリスがここに拠点を構えた理由だった。創業者のポール・カッティンとジョルジュ・クリスチャンは、富裕層向けの市場だったスイス時計業界に風穴を開ける、手ごろで高品質の時計を目指していた。そのため鉄道が通り、物資の運搬が容易に行えるヘルシュタインに拠点を構えたのだ。
1904年に創業した「ORIS」。その名はこのエリアを流れる川から命名した(本社前の小川ではない)。アルファベット4文字で表記しやすく、どの言語圏であっても発音しやすいというのがその理由だ。最盛期には約120万個の時計を製作し、スイス三大ブランドの一角をなすほどになったが、クオーツショックで打撃を受け、存続の危機に陥る。そこで活躍したのが、現会長であるウーリック・W・エルゾックだ。
「ようこそ、オリスへ」。本社を訪ねると、エルゾック氏が笑顔で出迎えてくれた。最盛期に比べると規模は小さくなったが、1904年の創業以来変わらず、この地で時計を作り続けている。エルゾック氏は、戦略として「機械式時計」のみを作ることにこだわった。
そして針やケース、ダイヤルなどを製作する良質なサプライヤーと関係を深め、良作の時計を作るという戦略が功を奏し、今では中価格帯の時計ブランドを代表するポジションを得た。
オリスの時計はユーザーフレンドリーなムードがある。それはどこから来るのか? その理由が、本社に行ってわかった。
なんと本社一階には誰もが入ることができるショップがあるのだ。ここはメンテナンスの受付でもあり、現行モデルの購入もできる。そしてトレーナーなどのオリスグッズの購入もでき、さらには地元で作られたお菓子なども販売している。そして奥にはコーヒースペースがあるのだが、ここは本社スタッフも利用する場所で、ガラスの向こうにはメンテナンス工房が見えるようになっている。つまりユーザーとブランドの距離感が、非常に近いのだ。
そのオリスのフレンドリーさの象徴が、マスコットのクマである。本社社屋にも飾られ、グッズにもなっているが、これは高級感にあふれる煌びやかな世界の中で、人々を笑顔にするために存在しているという。
オリスは良質な時計を通じて、豊かな時間を提供してきた。それだけでなく、ユーザーフレンドリーであり続けたいと考えている。そんな真摯な姿勢が、今も創業の地に受け継がれていることがわかる。
ジュネーブ国際空港に隣接する国際見本市会場で開催された「Watches and wonders」でも、オリスは大きなブースを構えており、多くの来場者でにぎわっていた。オリスはみんなから愛されるブランドなのだ。
そこで発表された新作の中で話題だったのは、「プロパイロット X カーミット エディション」だろう。これは、ザ・マペッツの人気キャラクターである、カエルのカーミットとのコラボレーションモデルだ。彼の体の色に合わせた明るいグリーンが目を惹くが、6時位置のカレンダーは、1日がカーミットの顔になっている。この“カーミット・デイ”は、月の始まりを笑顔でスタートするための、ちょっとした遊び心だ。また廃棄される鹿の皮をアップサイクルして美しいレザーストラップに仕上げた「ビッククラウン キャリバー473」は、エシカルな魅力も深い。そして画期的な製造工程から生まれたカーボンケースの「プロパイロット アルティメーター」は、世界初の機械式高度計を備えているパイロットウォッチだ。
オリスの時計は良品適価を貫くが、だからといって無個性ではない。ユーザーの様々なライフスタイルに寄り沿ってくれる時計が揃っている。
取材・文:篠田哲生 / Report & Text:Tetsuo Shinoda
写真:江藤 義典 / photo:Yoshinori Eto
オリス(ORIS) についてのお問い合わせは…
オリスジャパン株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座4丁目3-14 和光オリスビル
TEL: 03-6260-6876
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※価格は2023年6月15日現在のものです。
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