ヘルシュタイン~ジュネーブ
スイスの現地取材で見えてきた
「オリスの今」


スイスの時計産業は、ジュネーブとジュウ溪谷というフランスに近いエリアが中心となる。しかしオリスはバーゼルに近いドイツ語圏の街、ヘルシュタインに拠点を構える。
なぜこの地なのか? その歴史を読み解くと、オリスの哲学が見えてくる。


みんなのための時計を作る

 国際河川のライン川が流れ、フランスとドイツと国境を接する貿易都市バーゼル。そこか電車を乗り継ぎ、最後はローカル線のヴァンデンブルグ鉄道に乗車。のどかな田園を15分ほど走るとオリスの本社と工場が見えてくる。


 この鉄道こそが、オリスがここに拠点を構えた理由だった。創業者のポール・カッティンとジョルジュ・クリスチャンは、富裕層向けの市場だったスイス時計業界に風穴を開ける、手ごろで高品質の時計を目指していた。そのため鉄道が通り、物資の運搬が容易に行えるヘルシュタインに拠点を構えたのだ。

ピンク色の外壁が目立つオリスの本社工房。この建物は1929年に建てられたものだ。


 1904年に創業した「ORIS」。その名はこのエリアを流れる川から命名した(本社前の小川ではない)。アルファベット4文字で表記しやすく、どの言語圏であっても発音しやすいというのがその理由だ。最盛期には約120万個の時計を製作し、スイス三大ブランドの一角をなすほどになったが、クオーツショックで打撃を受け、存続の危機に陥る。そこで活躍したのが、現会長であるウーリック・W・エルゾックだ。


社屋内には歴史や技術を展示するスペースも。

暖かな空気に包まれる場所

「ようこそ、オリスへ」。本社を訪ねると、エルゾック氏が笑顔で出迎えてくれた。最盛期に比べると規模は小さくなったが、1904年の創業以来変わらず、この地で時計を作り続けている。エルゾック氏は、戦略として「機械式時計」のみを作ることにこだわった。


 そして針やケース、ダイヤルなどを製作する良質なサプライヤーと関係を深め、良作の時計を作るという戦略が功を奏し、今では中価格帯の時計ブランドを代表するポジションを得た。


 オリスの時計はユーザーフレンドリーなムードがある。それはどこから来るのか? その理由が、本社に行ってわかった。


 なんと本社一階には誰もが入ることができるショップがあるのだ。ここはメンテナンスの受付でもあり、現行モデルの購入もできる。そしてトレーナーなどのオリスグッズの購入もでき、さらには地元で作られたお菓子なども販売している。そして奥にはコーヒースペースがあるのだが、ここは本社スタッフも利用する場所で、ガラスの向こうにはメンテナンス工房が見えるようになっている。つまりユーザーとブランドの距離感が、非常に近いのだ。


1階にあるショップスペース。時計をメインに扱う。

 そのオリスのフレンドリーさの象徴が、マスコットのクマである。本社社屋にも飾られ、グッズにもなっているが、これは高級感にあふれる煌びやかな世界の中で、人々を笑顔にするために存在しているという。


ショップでは地元の名産品も販売される。

 オリスは良質な時計を通じて、豊かな時間を提供してきた。それだけでなく、ユーザーフレンドリーであり続けたいと考えている。そんな真摯な姿勢が、今も創業の地に受け継がれていることがわかる。


誰でも立ち入り可能なコーヒースペースは、スタッフの憩いの場でもある。その奥に見えるのが、メンテンナンス工房。

Watches and wondersで感じたオリスの愛情

 ジュネーブ国際空港に隣接する国際見本市会場で開催された「Watches and wonders」でも、オリスは大きなブースを構えており、多くの来場者でにぎわっていた。オリスはみんなから愛されるブランドなのだ。


Watches and wondersのブースでは、大きなクマがお出迎え。

 そこで発表された新作の中で話題だったのは、「プロパイロット X カーミット エディション」だろう。これは、ザ・マペッツの人気キャラクターである、カエルのカーミットとのコラボレーションモデルだ。彼の体の色に合わせた明るいグリーンが目を惹くが、6時位置のカレンダーは、1日がカーミットの顔になっている。この“カーミット・デイ”は、月の始まりを笑顔でスタートするための、ちょっとした遊び心だ。また廃棄される鹿の皮をアップサイクルして美しいレザーストラップに仕上げた「ビッククラウン キャリバー473」は、エシカルな魅力も深い。そして画期的な製造工程から生まれたカーボンケースの「プロパイロット アルティメーター」は、世界初の機械式高度計を備えているパイロットウォッチだ。


 オリスの時計は良品適価を貫くが、だからといって無個性ではない。ユーザーの様々なライフスタイルに寄り沿ってくれる時計が揃っている。

ブース内には、機械仕掛けの面白さを表現する「からくりオブジェ」も展示した。これはレ・マン湖畔で開催したオリスミュージアムにて展示されていた作品の縮小版である。

プロパイロットX カーミット エディション

カエルのキャラクター、カーミットとコラボレーション。搭載ムーブメントが自社設計のCal.400。耐磁性とロングパワーリザーブ、10年保証を備えており、ケースも軽くて着用感に優れる。自動巻き、チタンケース&ブレスレット、ケース径39mm、パワーリザーブ約120時間、10気圧防水。660,000円(税込)


6時位置のカレンダーは毎月1日がカーミットの顔。月の始まりを笑顔でスタート!

ビッグクラウン キャリバー473

オリスのアイコンであるポインターデイトモデルの最新版。ダイヤルは北欧デザインを思わせる柔らかなブルー色。ムーブメントは自社設計のCal.403は、あえて手巻き式にすることで味わいを加える。自動巻き、SS&レザーストラップ、ケース径38mm、パワーリザーブ約120時間、5気圧防水。638,000円(税込)


鹿革のストラップは、バイオテクノロジーのエンジニアであるカドリ・ブンダー・フォンタナと生物学者のコニー・ティエル‐エジェンターが立ち上げた「チェルボボランテ」が製作。害獣として駆除され廃棄されていた野生の鹿革を、有効利用したエシカルな製品だ。

プロパイロット アルティメーター

世界で初めて、機械式高度計を搭載したパイロットウォッチ。4時位置のリューズを緩めて大気を入れて気圧を計測し、目盛りを調整して数値を読みとる。内部に湿気が入らないように、防湿構造になっている。自動巻き、カーボンケース、ケース径47mm、パワーリザーブ約56時間、ファブリックストラップ、10気圧防水。880,000円(税込)


カーボン製のケースはチューリッヒのハイテク企業「T9研究所」と共同開発。ケースの形に合わせて一層ずつ重ねる特殊技術を用いるため、横から見ると縞模様が見える。


取材・文:篠田哲生 / Report & Text:Tetsuo Shinoda
写真:江藤 義典 / photo:Yoshinori Eto




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オリスジャパン株式会社
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TEL: 03-6260-6876

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※価格は2023年6月15日現在のものです。
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