Watch Person Interview vol.69モンブラン ウォッチディヴィジョン マネージング・ディレクター ダビデ・チェラート インタビュー

　 さて、もうひとつのコレクション「モンブラン タイムウォーカー」でも2モデルが登場。そのうち2017年のSIHHに引き続き発表された限定第2弾「モンブラン ラリータイマー クロノグラフ リミテッド エディション 100」が要注目だ。

　 これは計時用ストップウォッチの名門ミネルバの歴史あってのモデルで、2017年のSIHHではあまりの人気ぶりに現品はショウケース越しに見ただけだ。往年のレースカーのダッシュボード・クロックを、そのまま腕時計化した仕様で、直径はなんと50mm。通常このタイプのモデルは、商品化する際にはケースを小径化して“無難なもの”に軟着陸させるが、当モデルにはその意図はさらさら無く、直球勝負の潔さがある。これに関してチェラート氏はこのように述べる。

「巨大サイズですが、チタン製なので見た目ほどの重量はありません。自動車のコレクターで時計愛好家には遊び心溢れる格好のモデルで、ファッション的にも魅力的と判断し、この仕様で決断しました。100本限定でしたが、おかげさまで本年2017年のSIHHでは完売しました」

　 その好評価ぶりに2018年のSIHHでも、新たに100本限定の第2弾が登場することになったのである。また当モデルはストラップの着脱により、簡単に腕時計、ストップウォッチ、ダッシュボード・クロックへと変わる高いコンバート機能を持つ。

　 なお、ここで最近のモンブランの革ストラップに注目したい。「スター レガシー」では上品なブルー、「タイムウォーカー」ではヴィンテージ感溢れるブラウンのストラップが用意されているが、いずれも色味や質感が大変優れている。また2017年11月の第7回「オンリー・ウォッチ（Only Watch　デュシェンヌ型筋ジストロフィー対策支援チャリティー・オークション）」の出品モデル「モンブラン 1858 クロノグラフ タキメーター ユニークピース オンリー・ウォッチ 17」にも、ヴォンテージ調のグリーン・ストラップが採用されており、彼らのストラップに対する相当なこだわりを感じる。

「まず『スター レガシー』のブルーの色合いを見てください。ストラップの中心部から左右両端に向かって、色味が徐々に薄くなっていますね。これは“スフマート（伊語。Sfumato）”という特殊な技法を用いています」

　 “スフマート”とは“ぼかした”“蒸発した”という意味の、絵画で使われるグラデーション技法のこと。物体を包む空間のボリューム感を表現するため輪郭線をぼかすこの絵画技法は、ルネッサンス期にイタリアで始まりレオナルド・ダ・ヴィンチも創始者のひとりと言われている。

「これはフィレンツェ郊外の自社皮革工房『プレテリア（伊語。Pelletteria　皮革製品という意）』で製作しているオリジナルのものです。我々は革ストラップを大変重要な要素と見ています。オンリー・ウォッチのグリーン・ストラップが素晴らしいですか？　この色は今回限りですがSIHHまでもう少しお待ち下さい」

　 どうやら次のSIHHに登場するようである。

　 モンブランではバッグやノートなど革製品も充実しているので、フィレンツェの工房は総合的に見ても重要拠点であろう。その昔モンブランはドイツの高級皮革ブランド「ゼーガー（Seeger）」を所有していたこともあり、皮革の品質に関しては十分な見識と実績がある。

　 2018年のSIHHでは、創業160周年のミネルバ記念モデルが気になるところだが、この他かなり充実した新作を用意している印象を大いに受けた。1月のSIHHの結果リポートを楽しみにして頂きたい。