「餅は餅屋」という言葉があるが、時計業界では、徐々にその定義が当てはまらなくなっている。
どうしても業界の常識に縛られてしまう時計専業メーカーとは異なり、ジュエラーが作る時計たちは、どれもが自由な感性から生まれているため、魅力的に見えるのだ。
その先陣に立つのが、1906年に創業したパリを代表するハイ・ジュエラーの「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」。
ここ数年は「ポエティック コンプリケーション」というコンセプトを立ち上げ、複雑時計機構を使って詩的な世界を表現することに腐心している。
そのどれもが独創的で美しく、そしてロマンティックな世界に満ち溢れている。ここまで"流れる時"をアート化させた時計はないだろう。
ここ数年の「ポエティック コンプリケーション」は、メンズウォッチがメインだったが、今年はレディスウォッチが登場。そもそもヴァン クリーフ&アーペル自体が、女性からの人気と知名度が高いため、今まで以上に、詩的で美しい世界が知れ渡ることだろう。
一方メンズウォッチは、2013年に登場したドレスウォッチ「ピエール アーペル(PIERRE ARPELS)」に、プレシャスメタル用いたブレスレットモデルを追加。もちろんジュエラーらしい美的表現を凝らしており、シンプルなだけでは収まらない、美意識と遊び心を感じさせる仕上がりになっている。
総じてコンサバティブな戦略が目立った今年のSIHHだが、ヴァン クリーフ&アーペルのブースだけは、クリエイティブな空気に包まれていた。嗜好品として、アートピースとしての時計トレンドは、ここから発信されるのだ。