
ここ数年の時計業界では、新興勢力の突き上げが激しくなっており、永い歴史と伝統を誇る老舗メーカーとしても安穏としていられない。そこで彼らが選んだ作戦が、自社のアーカイブからデザインを引用する"原点回帰"。これは新興勢力では真似できない、老舗メーカーだけの特権だからである。
1892年にアメリカで創業された老舗ハミルトン(HAMILTON)も、精力的に原点回帰を進めている。2011年のバーゼルワールドでは主に1940年から1970年代の傑作をモチーフとした新作が目立った。
この時代はクォーツショックに見舞われる直前の"機械式時計の黄金期"にあたり、機構的にもデザイン的にも完成された時計が多い。それだけに当時のエッセンスを抽出した復刻モデルたちは、現代の感性に照らし合わせても十分に魅力的だ。
時計はアクセサリーとしての魅力がある。しかしあまりにもエッジの効いたデザインは、やがて時代遅れになるだろう。しかし既に発売から永い時間が経ち、十分に熟成されたデザインであれば、その魅力はタイムレスだ。
永く愛せるということ。ハミルトンの時計の魅力の核はここにある。