世界最高峰のタフネスウオッチ、カシオ「G-SHOCK」。
その最高峰ラインである「MR-G」が、今年30周年を迎えた。
その記念すべきアニバーサリーに合わせて誕生したのが、本格派ダイバーズウオッチの「フロッグマン MRG-BF1000EB」。
人生を謳歌するアクティブな人々のための時計となっている。
1983年にデビューしたG-SHOCKは、圧倒的な耐衝撃構造を実現させるため、時計を動かすモジュールを樹脂製のケースでくるみ、同素材のバンドを合わせた。樹脂の弾性によって、外からの衝撃を吸収したのだ。
この理にかなった構造からすると、1996年に登場した「MRG-100」は、まさに常識外れの時計だった。ケースもブレスレットも、樹脂のようには衝撃を吸収できない金属製。しかも樹脂製よりも重たい(=大きな運動エネルギーを持つ)ため、万が一落とした際には、強い衝撃が時計に加わることになる。それまでのG-SHOCKの耐衝撃性能に対するロジックからすると、MRG-100のスタイルは水と油のようなものだ。
そもそもこの時計は、生まれる過程からして異色だった。「MRG-100」は、大人向けのG-SHOCKをつくるという正規のプロジェクトと、壊れないメタルウオッチをつくるという有志が集まった非正規のプロジェクトが融合したもの。開発コードは“ミスターG”で、それが転じてMR-Gとなった。MはMajesty(マジェスティ=威厳、風格、堂々とした様子)を、RはReality(リアリティ=本物、真実、現実、本質的な価値)を意味している。
MRG-100
1996年デビューした、MR-Gのファーストメタルモデル
この初代フルメタルMR-Gである「MRG-100」が発売された1996年は、G-SHOCK人気が爆発していた時代でもある。人々は他とは違ったG-SHOCKを求めており、定番モデルの数倍という価格であっても、売れ行きは好調だった。
外装素材にチタンを用いたのは、軽量化が目的だったが、さらに使い込んで味わいが深まる時計を目指したのも理由であり、女性用にも使用していた小型モジュールを使うことで、ケースサイズを縦(12-6H)46.1mm、横(3-9H)43.4mm。ケース厚15.7mmにコンパクト化して、日常使いをしやすくした。
MRG-1100
1999年にデビューした、MR-G初のフロッグマン
このMR-Gだが、“カッコいい大人のための時計”として生まれたので、ライフスタイルに寄り添うモデルも必要となる。そこで1999年にデビューしたのが、MR-G版のフロッグマンだ。ISO規格に準ずる本格派ダイバーズウオッチとして1993年にデビューしたフロッグマンは、すでに圧倒的人気モデルだったが、MR-G化するためにデザインを刷新。丸みを帯びたケースは海底に堆積した石をイメージし、高級感を引き出すため、ケースをがっちり固定するためのビスは排除した。それでもISO規格に準拠し、耐衝撃性も確保。カシオらしい高性能ウオッチであった。
2000年代に入ると、カシオは“時計として価値”を高めるため、カシオらしいデジタル技術を駆使したアナログクオーツモジュール開発を加速させた。もちろんG-SHOCKにも採用されるようになり、MR-Gは一気に”高級時計“としてのオーラをまとい始める。こうなると初代MR-Gのような使い込んで味わいが出る時計というわけにはいかない。
そこで自動車のエンジンパーツなどに用いるDLC(Diamond Like Carbon)の技術をケースやブレスレットに取り入れ、強固な皮膜を持つ黒いメタルウオッチを実現させた。黒はまさにG-SHOCKの色。高級感があり、タフなメタルアナログウオッチという個性を手に入れたMR-Gはますます人気を高めていく。
カシオが誇る最高峰のG-SHOCKシリーズ「MR-G」。その誕生の裏には、全く異なる2つのプロジェクトと、ベールに包まれた開発ストーリーがありました。
当時、G-SHOCKチームの中心として開発に携わっていた井崎 達也氏が、90年代のブーム黎明期から「MR-G」誕生にいたるプロセス、その後、名前の由来となった開発コード「ミスターG」について語ります。
低価格帯が中心だった当時のG-SHOCKが、いかにして高級ラインへと進化を遂げたのか。当時の貴重なエピソードと共にお楽しみください。
MRG-G1000RT
2015年にデビューした、MR-G初の”日本の伝統美“モデル
もはや品質的にも価格的にも“高級時計”のレベルに達したMR-Gが、当時世界最大の時計見本市だった「バーゼル・ワールド」にデビューしたのが2008年のこと。これ以降のMR-Gは、日本生まれの時計ブランドとして、日本らしい表現に注力。そこで選ばれたのが日本の職人技だった。
2015年にデビューした「MRG-G1000RT」は、日本刀に表れる刃紋である「にえ」を再結晶64チタンで表現。さらに深みのある藍色のDLCコーティングを施してベゼルに用いた。このモデルは職人技をイメージしてデザインに落としこむものだったが、それ以降は優れた技術をもつ職人たちとコラボーレションし、日本ならではの表現をMR-Gに取り入れようになる。2016年デビューの「MRG-G1000HT」では、ベゼルやブレスレットの駒に採用した「鎚起(ついき)技法」を採用している。
MRG-B5000B
2022年にデビューした、MR-G初のオリジンモデル
さまざまな技術や表現を積み重ねてきたMR-Gだが、進化があるからこそ、伝統にも目を向ける。そのきっかけとなったのは、アイコンモデルをフルメタル化し2018年に発売された「GMW-B5000」の大成功であった。これまでとは違った層がこのモデルを手にするようになり、クラシック系G-SHOCKに対する人気が再燃することになる。
当然MR-Gでもと考えたのだが、クラシック系G-SHOCKは樹脂で製作するためのデザインなので曲面が多くて細部まで磨けず、MR-Gらしい高級感を引き出すことが難しかった。そこでカシオは、ベゼルをマルチパーツ化して細部まで磨き、組み立ててベゼルをつくる方法を考案した。これならクラシック系G-SHOCKのデザインを再現しつつ、高級感を高めることができる。その結果、2022年に初代DW-5000のスタイルを継承する「MRG-B5000B」が生まれ、ついにMR-Gは完全体となった。
優れた耐衝撃性能、黒くてタフな外装、日本らしい表現、クラシック系G-SHOCKのデザインを実現するマルチガード構造を実現し、MR-Gは新しいフェーズへと突入していくのだった。
カシオが誇る最高峰のG-SHOCKシリーズ「MR-G」のさらなる進化と世界戦略について引き続き井崎 達也氏が語ります。
日本刀の刃文を表現した2015年のスペシャルモデル(MRG-G1000RT-1A)の誕生から、デザイナー出身の石坂氏による伝統工芸の「匠の技」との本格的なコラボレーション、そして世界的な時計の見本市「バーゼルワールド」でのG-SHOCKの躍進を振り返ります。
さらに、初代G-SHOCKのDNAを受け継ぐ「オリジン」をMR-G化するという、極限への挑戦(MRG-B5000)の裏側にあった、ベゼルを25体にバラバラにするという驚きの発想や新素材「コバリオン」採用の秘話に迫ります。
G-SHOCKの生みの親・伊部 菊雄氏から受け継いだ「夢を追求し、挑戦を続ける」というカシオの究極のものづくり精神とは。
今年MR-Gが30周年を迎えるにあたり、記念モデルとして選ばれたのは「フロッグマン」だった。それはこの時計こそが、高級時計としてのMR-Gのステイトメントを語るものだからだ。
高度なエンジニアリングと匠の技を融合するMR-Gは、当然高価になる。こういった時計を選ぶ人物は、冒険心をもった富裕層であるだろう。彼らは他にはない体験を求めており、肉体的にも精神的もタフな冒険旅行を楽しむのではないか? そんな想像から、フロッグマンをベースモデルとすることが決まった。
G-SHOCK初の本格ダイバーズとして1993年に生まれたフロッグマンは、使用するシーンや人物像を考え、そこに合わせてデザインや機能を構築する「MASTER OF G」として誕生。○○マンという愛称を持つモデルの始まりでもあり、MR-Gとしても1999年にデビューするなど関係も深いのだから、30周年を記念するにふさわしいだろう。
「フロッグマン MRG-BF1000EB」のデザインコンセプトは「海の極地探検」。極海でしか見られない「ブライニクル」という自然現象をテーマとするが、これは、冷たい海の中に発生する渦を巻きながら成長する氷柱のこと。荘厳な美しさがあるため、海の極地探検の目的地にもなっている。
心躍る冒険旅行の相棒には、タフであるだけでなく、高級感で気分を上げてくれるものがいい。「フロッグマン MRG-BF1000EB」はまさにそういう時計として生まれたのだ。
フロッグマン MRG-BF1000EB
クオーツ(タフ・ソーラー)、64チタン×コバリオンケース、ケース径49.7mm。ISO規格200m潜水用防水。世界限定800本。価格:1,210,000円(税込)
荘厳なブライニクルの世界観を表現するために採用されたのが、「VORTEXファセットカットコバリオンベゼル」た。Vortexとは渦巻のことで、研磨職人によるカットが渦を巻くように配置される。この精密な加工を手掛けたのが、研磨職人の小松一仁氏である。
「今回のベゼルは多面構造であるだけでなく、各面に筋目が入るデザインなので、筋目を加工しつつ、シャープな稜線を作ることに大変苦心しました。しかも筋目の方向も決まっているため難易度はかなり高い。研磨の方法は、宝石の中で唯一研磨の方向が決まっているダイヤモンドを参考にしています」
それは小松氏の経験だからこそなせる技術だ。
「ベゼルのカットは、この面の筋目がこういう角度だから次の面はこういう角度に入れていくという揺らぎのようなルールをすべて決めて計算したうえで、職人の手でカットを入れています。仕上がった時に違和感のない筋目のリズムが見えるように仕上げています」
日本の伝統的な技術をMR-Gに取り入れるのは、日本が誇る技術に光をあて、職人たちの可能性を引き出すことにもつながる。コバリオンなど普段の仕事では使わない素材で、高い要求レベルに応えることは難しいが、楽しいチャレンジでもあるだろう。だからこそ、研磨職人に超絶技巧による細やかな仕上げを、ルーペを使って鑑賞して欲しい。それくらい手の込んだ、美しい“作品”となっている。
コバリオンは東北大学金属材料研究所が開発したコバルトクロム合金で、プラチナと同等の美しい輝きを持ち、硬度も高い。しかも耐海水性も高く、ダイバーズウオッチの素材に適している
「フロッグマン MRG-BF1000EB」では、ベゼル以外にも美しい仕掛けを凝らす。例えばフロッグマンのアイコニックなデザインであり、ケースの防水性を高める機能もあるふたつのビスには、57面のラウンドブリリアンカットを施したラボグロウン ブルー サファイアをあしらった。きらりと輝く美しい表現を引き出すために、ビスはケースバック側からねじ込方式となっている。
そしてもちろんケースは、70個以上で構成される多パーツ構造となり、64チタン製のパーツを丁寧に磨くことで、美しいエッジを作り出しつつ、200Mという潜水用防水も実現している。
さらに衝撃が加わりやすいリューズ周りと9時位置のプロテクターは、ベゼルとの間にラバーの緩衝材を使用する。そしてリューズにも緩衝材を挟み込み、耐衝撃性能を高めるクラッドガード構造も採用している。
機能もハイスペック。世界6局に対応する標準電波によって自動的に時刻を修正。さらにスマートフォンリンクでは専用アプリとの連携によりワールドタイムなどの設定も簡単。ダイヤル上の表示を減らすことで視認性を高める。まさに構造と機能の両方で、最高峰を実現した時計なのだ。
工場(ラボ)で生成されることから、ラボグロウンと呼ばれるサファイア。輝きも組成も天然石と全く変わらない。
プッシュボタン周りも64チタン素材を採用。すべてのクオリティが上がっている。
G-SHOCKを代表するタフネスシリーズ「MASTER OF G」の原点であり、ダイバーズウオッチの象徴でもある「FROGMAN(フロッグマン)」の30周年記念モデル(MRG-BF1000EB-1AJR)の開発秘話を、井崎 達也氏が語り尽くします。
今回は従来の「日本の伝統工芸(兜や日本刀)」モチーフとは一味違い、南極や北極の極地で見られる神秘的な自然現象「ブライニクル(極海の氷柱)」の世界観を表現。
超硬合金「コバリオン」に渦巻き状のカットを施すため、研磨のプロ「小松ダイヤモンド」と再びタイアップ。さらに、フロントのビスに57面カットの「ラボグロウンブルーサファイア」を裏から留めるという、時計の常識を覆す特殊構造や、ユーザーが簡単にチタンバンドへ変更できる画期的な構造の裏側へと迫ります。
初代フロッグマン(DW-6300)の開発時にネイビーシールズへ行ったヒアリングの思い出から、生みの親・伊部 菊雄氏の「諦めずに前へ進め」という教えまで、G-SHOCKのモノづくりの未来へ続く必見のエピソードです。
「フロッグマン MRG-BF1000EB」では、ライフスタイルに寄り添う仕掛けも取り入れる。ストラップは汚れに強いデュラソフトラバーで、肌あたりも柔らか。明るいホワイトカラーのストラップは、夏の日差しに映えるだろう。
さらにこのモデルにはチタン製のブレスレットも付属。専用器具を使えば簡単に着脱できる。またブレスレットのバックルは21mm伸長するエクステンション機能も搭載しており、実用性という点でも正しく進化している。
ちなみにこの時計を収納するケースも、特別に製作されたもの。日本製にこだわる高性能スーツケースブランド「プロテカ」製の専用ケースは、時計とブレスレット、そしてストラップ交換時に使用する専用ツールも同梱される。
MR-Gが歩んできた30年間は、G-SHOCKの可能性を広げる試みの連続だった。そして大人のためのG-SHOCKとして生まれたMR-Gは、いつまでも冒険心を失わない大人のための、ラグジュアリーなタフネスウオッチとして確固たる地位を築いた。「フロッグマン MRG-BF1000EB」は、その最先端であり、価格に見合った魅力的な時計となっている
本格ダイバーズウオッチらしく、ケースはボリューム感がある。夏のカジュアルなるタイルにアクセントを加えるにも最適。ラバーストラップとメタルブレスは気分によって使い分けたい。
MR-G FROGMAN
MRG-BF1000EB-1AJR
Ref:MRG-BF1000EB-1AJR
ケースサイズ:縦56.0×横49.7mm
ケース厚:18.6mm
ケース素材:チタン/コバリオン
防水性:ISO200m潜水用防水
ストラップ:デュラソフトバンド(ラバー)、交換用チタンブレスレット付き
ムーブメント:タフソーラー(ソーラー充電システム)
仕様:時・分・秒・日付・曜日表示、耐衝撃構造(ショックレジスト)、重量132g、LEDライト(スーパーイルミネーター、残照機能付き)、フルオートカレンダー、パワーセービング機能(暗所では一定時間が経過すると運針を停止して節電します)、電波受信機能、デュアルタイム(27タイムゾーン、サマータイム自動設定機能付き、ホームタイムの時刻入替機能付き)、ストップウオッチ(1秒、24時間計)、針位置自動補正機能
限定:世界限定800本
価格:1,210,000円(税込)
発売予定:2026年6月12日
取材・文 / text:篠田 哲生 / Tetsuo Shinoda
写真 / Photos:江藤 義典 / Yoshinori Eto
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