時計の仕事を長く続けていると、良くも悪くも目が慣れてしまう。
スペック表を見るだけでも時計の素性がぼんやりと浮かんでくるし、
商品に触れればデザイナーやマーケティング担当者の意図が見えてくる。
しかしここ最近のオリスは、そういった予想を、良い方向に裏切ってくる。
オリスはプロフェッショナルを納得させる実力派として、
めきめきと頭角を現しているのだ。
スイスのヘルシュタインという小さな町にて、1904年に創業したオリス。当初は懐中時計から生産し、1925年から腕時計の製造をスタート。その長い歴史の中で、一貫して機械式時計のみを作ってきた。
ブランドの規模はそれほど大きくはないが、歴史に裏打ちされたモノ作りの伝統や2002年に商標登録したレッドローターに代表される定番のスタイルを丁寧に継承しており、”スイス時計の良心“として、時計愛好家から高く評価されている。
1929年当時のオリスの社屋。
しかし創業110年となる2014年に、実に35年ぶりとなる自社開発ムーブメンとCal.110を発表したあたりから、今まで以上にオリジナリティの表現に力が入ってきた。
そもそも“自社ムーブメント”は、開発コストがかかるので高価格帯を得意とするブランドでなければメリットは薄い。一方でオリスはバリュー フォー マネーの意識が高いブランドであり、そこにブレはない。ではなぜ相反する戦略をひとつにまとめることができたのか?
その答えが「独立ブランド」であるということ。時計業界にはリシュモングループやスウォッチグループといった、巨大グループがあるが、オリスはどこにも属さずに独立独歩でやっている。そのため必ずしも短期毎に利益を上げる必要がなく、グループ内の力学に影響されずに済むこと。つまり時計作りに対する自由度の高いため、“バリュー フォー マネーの高い自社ムーブメントモデル”を作ることができるのだ。
現代のオリスの社屋。
その一例が「プロパイロットX キャリバー400」。チタン製のケース&ブレスレットを使用するので軽くて着用感に優れ、しかも2020年に発表された自社開発ムーブメントのCal.400を搭載。耐磁性と120時間のロングパワーリザーブ、そして高精度という優秀な時計だが、価格は税込みで50万円代となっている。
長く機械式時計だけを作ってきたオリスには、様々なノウハウがあり、サプライヤーとも有効な関係を築いてきた。メジャーブランドではお馴染みの、セレブリティを使ったアンバサダー戦略もとらない。創業した頃から富裕層のための時計ではなく、市民のための時計を作ってきたブランドであり、無駄を省いて時計に投資するという姿勢を120年以上続けてきた。だから、こういった時計作りが可能になったのだ。まさに、オリス恐るべしである。
プロパイロットX キャリバー400
2022年に発表されたパイロットウォッチ。こぶりなケース径やシャープな外装など、全体的にモダンにまとめている。自動巻き、Tiケース&ブレスレット、ケース径39mm。550,000円
時計ジャーナリストの篠田哲生が、ゲストを迎えて時計トークを行う「ザ プロフェッショナル トーク」。 今回のゲストはファッションブランド「STILL BY HAND」のデザイナー柳優介氏。
まずはオリスの「ブランド」について紹介。独立系ブランドであることが、実は時計作りに大きく関係しているというのだが…。
機械式時計の基本的な構造は、約400年も前から変わっていない。もちろん工作機械などは進化しているが、依然として職人の手仕事に頼る部分は大きく、“工業製品”でありながら、どこか“工芸品”的な魅力がある。
特に携帯電話の時代になってからは、時刻を知る道具としての実用品としての時計の価値は、少しずつ失われつつある。だからこそ工芸的な温かみや手が作り出す尊さのような、エモーショナルな部分が評価されているのだろう。
オリスの場合、こういった手仕事から生まれるエモーショナルなディテールは、目立たないところに隠れている。しかし時計を腕につけ、眺めた時にふと気が付くものでもある。
機械式ムーブメントは、必ず職人が手仕事で組み立てる。人が機械に命を吹き込むのだ。
「プロパイロットX キャリバー400」の場合、まずはケースやブレスレットに注目したい。素材はチタンなのだが、とにかく酸素と結合しやすくて、磨いたり削ったりして地金が露出すると、すぐに酸化してしまう。そのためエッジを絶たせる仕上げが難しいのだ。
しかしこのモデルの場合、ケースの面と面の稜線をきっちり合わせている。ブレスレットも同様で、シャープな造形の作りはとても細かい。ここにも熟練者の手仕事が大きく関わっている。
サイドからラグへと流れる部分は、特に造形美が美しい。平面と平面から生まれるキレのある稜線が、時計にモダンさ加える。
またムーブメントに仕上げも独特だ。自社のアイデンティティを語る自社ムーブメントの場合、キラッと光らせて高級感を演出するのがセオリー。しかしオリスのCal.400は、あえてマット仕上げにして工業的な魅力を引き出している。また大型のプレートでパーツ類をガッチリ押さえて、埃も入れないように考えられている。
「プロパイロットX キャリバー400」は、男っぽいツールウォッチであるのだから、キラッと光る仕上げのムーブメントよりも、こういった工業的な仕上げの方が馴染みは良さそう。こういった小さな手仕事の積み重ねが、時計の完成度を高めているのだ。
Cal.400
耐磁性パーツを使用することで耐磁性能を高め、ツインバレルによって120時間の駆動時間を実現。精度は-3~+5秒といいう優れたレベルに。10年保証をつけている点からも、製品への自信が垣間見られる。
時計ジャーナリストの篠田哲生が、ゲストを迎えて時計トークを行う「ザ プロフェッショナル トーク」。 今回のゲストはファッションブランド「STILL BY HAND」のデザイナー柳優介氏。
第二回は、高級時計では外すことができない「手仕事」について。プロが見ると、手間のかかる仕事をやっていることは一目瞭然。それは時計にもファッションにも通じる真理だとか。
時計のデザインには、デザイナーのメッセージが込められている。そこに思いをはせるのも、時計愛好家の楽しみ方である。
「プロパイロットX キャリバー400」はパイロットウォッチであり、グローブを着用した状態でも操作しやすいように考えられた大型のリューズが特徴。ケースやブレスレットは軽くて着用感に優れるチタン素材を使い、防水性能は10気圧と、機能面は必要にして十分である。
しかしダイヤルのデザインはかなり個性派だ。パイロットウォッチは揺れるコックピットの中で正確に時間を読み取る必要があるので、インデックスには算用数字であるアラビア数字を使うのがセオリー。ところが「プロパイロットX キャリバー400」は、ドレスウォッチに用いる繊細なバーインデックスを組み合わせた。さらにダイヤルカラーも凝っており、タフなパイロットウォッチでは使用されないピンクや深みのあるブルーを選んでファッション性を高めている。さらにはグレーモデルに至っては、針の色もダイヤルと同系色なので視認性は良くない。これはパイロットウォッチとしては御法度なデザインである。
「プロパイロットX キャリバー400」
繊細なバーインデックスで構成され、ピンク色のダイヤルは華やか。本気のパイロットウォッチでありながら、デザインで遊びを加えることで、オリスの新しい魅力を引き出す。自動巻き、Tiケース&ブレスレット、ケース径39mm。550,000円
なぜオリスは、「プロパイロットX キャリバー400」にこのようなデザインを採用したのか? 恐らくは既成概念からの脱却を狙っているのだろう。オリスは、実直な時計作りを行ってきた生真面目なブランドだ。
もちろんその真摯な姿勢は不変だが、自社ムーブメントや語りどころの多いモデルを増やすことで、コンサバなだけではない通好みの実力派というブランドイメージをさらに深めていこうという意思表示にも見える。歴史あるオリスは、まだまだ変化していくのだ。
オリスの未来はどうなる? 来年以降も楽しみだ。
時計ジャーナリストの篠田哲生が、ゲストを迎えて時計トークを行う「ザ プロフェッショナル トーク」。 今回のゲストはファッションブランド「STILL BY HAND」のデザイナー柳優介氏。
「デザイン」とは、デザイナーからのメッセージ。それを感じ取ることで、時計もファッションもより楽しくなる。さらに柳氏からは、時計×ファッションのコーディネート指南も。
取材・文:篠田哲生 / Report & Text:Tetsuo Shinoda
開催期間:2022月11月1日(火)~12月31日(土)
実施店舗:下記のキャンペーン実施店舗リストをご覧ください。
【キャンペーン特典】
キャンペーン期間中、下記のキャンペーン実施店舗にて「オリスキャリバー400シリーズの時計」をお買い上げいただいたお客様に交換用ストラップを1本プレゼントします。
※ご購入の時計によりお選びいただけるストラップが異なります。詳しくは販売店へお問い合わせください。
※交換用ストラップは時計のご購入後、約2ヶ月後のお渡しとなります。
※商品の在庫状況につきましては販売店へお問い合わせください。
オリス(ORIS) についてのお問い合わせは…
オリスジャパン株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座4丁目3-14 和光オリスビル
TEL: 03-6260-6876
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※価格は2022年10月28日現在のものです。
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