2021年6月に発表されたグラスヒュッテ・オリジナルの新作「シックスティーズ・クロノグラフ・アニュアルエディション 2021」は、1960年代モデルをモチーフとする人気コレクションの2021年期間限定モデル。印象的な立体感と美しいグラデーションで彩られたダークグリーンのダイアルを装備するこのモデルの魅力とは何か? その秘密を読み解いてみよう。
1960年代を意味する「シックスティーズ」のコレクションに登場した2021年の期間限定モデル「シックスティーズ・クロノグラフ・アニュアルエディション 2021」。周辺部から中心に向けて徐々に明るく彩色されたグラデーション仕上げのダークグリーン・ダイアルが大きな魅力となっている。
自由な感性が炸裂するポップ&ロック・ミュージックがブームとなり、最先端のファッションが人々の心を捉え、さらに環境問題、自然との共生、戦争、平和など、“今”に繋がるさまざまな問題が顕在化し、世界が動き始めた1960年代。
腕時計も従来な古典様式から脱却し、より自由でファッショナブルなスタイルを主張し始めた時代でもあった。
そんな1960年代の熱いスピリットを現代に蘇らせたのがグラスヒュッテ・オリジナルの人気コレクション「シックスティーズ」。
その最新作「シックスティーズ・クロノグラフ・アニュアルエディション 2021」は、ダイアルに時計界における最先端トレンドであるグリーンを採用。
その美しいダイアルは、グラスヒュッテ・オリジナルならではの高度な技術を見事に具現化した、2021年の期間限定エディションにふさわしい高い完成度を誇るモデルである。
グラスヒュッテ・オリジナルならではの立体感と陰影に富んだ仕上げが施されたダークグリーンのグラデーション・ダイアル。バトン型の針には繊細な蓄光塗料のラインが入り、これに対応してインデックスの外側に蓄光塗料を塗布したドットが配置されている。
この新しいクロノグラフには、グラデーション仕上げが施されたダークグリーンのダイアルが採用されている。とはいえ、これは単なるグラデーション入のグリーン・ダイアルではなく、そのベースには印象的な立体加工が施され、これが他のグリーン・ダイアルとは異なる個性を醸成している。
このダイアルを見て思い出したのが「ピーコック革命」という言葉。これは孔雀のオスがメスよりも華やかな羽根を身に着けていることから、男性も、もっとカラフルなファッションを楽しもうという1960年代に起こったムーブメントだ。
今でこそ「ピーコック革命」という言葉は古めかしいが、この提唱があったからこそ、今のように男性がカラフルなアイテムを身につけることに抵抗感がなくなったことは確かだろう。
そこで改めてこの「シックスティーズ・クロノグラフ・アニュアルエディション 2021」を見ると、孔雀の羽根を思わせる華やかなグリーンのダイアルを採用しつつ、ストラップにはマットな質感が特徴のグレーブラウンのヌバックが採用されている。
このコンビネーションはまさに絶妙。一見、派手に見えながら渋い色調のストラップでトーンをグッと抑える。ここに鋭いファッション感覚を見る。
当然、このスタイリッシュなケース&ダイアルに内包されたムーブメントも最上級のクオリティ。グラスヒュッテ・オリジナルの自社製造による自動巻きクロノグラフ「Cal.39-34」は4Hz(8振動/秒)のハイビートを正確に刻み、時分表示、スモールセコンド、センターのクロノグラフ秒針と30分の積算計を装備。さらに秒針停止機構を装備することで正確な時刻に修正することも容易だ。
また、シースルー仕上げのケースバックからは丁寧な面取りとグラスヒュッテ・ストライプ仕上げが施されたブリッジや地板を観察可能。グラスヒュッテ・オリジナルのダブルGロゴを透かし彫り加工した巻き上げローターには、比重が高く巻き上げ効率に優れた21Kゴールドが用いられている。
ケース径42mmのラウンド型ステンレススティール・ケースは腕へのフィット感を高めるべく、ラグが優雅な曲線を描く。これに呼応してサファイアガラスも古典時計を思わせる豊かな曲面のボンベ型を採用。リューズにはシンボルのダブルGのロゴが刻印される。
カーフスキンの表面を起毛したグレーブラウンのヌバックを用いたストラップを装備。その柔らかな質感と渋いトーンが、ダークグリーンのダイアルの主張を程よく抑え、落ち着いた雰囲気を醸し出すことに成功している。まさに絶妙なコンビネーションである。
サファイアガラスを用いたシースルー仕様のケースバックからは、グラスヒュッテ・オリジナルが自社で開発から製造までを行う自動巻きのクロノグラフ・ムーブメント「Cal.39-34」が見える。高い振動数で精度を確保した高精度にして信頼性に優れるキャリバー。
丸く打ち抜かれた真鍮あるいは銅のダイアル素材にプレスでインダイアルの段差を付け、さらにカッターで30度の角度で斜めにインデックスの溝を彫り込む。ダイアルのカラーによっては溝をシルバーにするため素材にジャーマンシルバー(洋銀)を用いるという。
この印象的なグラスヒュッテ・オリジナルのダイアル作りを担当するのが、グラスヒュッテと並んでドイツにおけるジュエリーや時計製造の拠点として知られるドイツ南部シュヴァルツヴァルト地方の都市フォルツハイムにあるダイアル製造工場である。
この工場に我々(グレッシブ取材班)は2016年12月に取材を行った。そこで当時のダイアル工場で得た情報を元に、「シックスティーズ・クロノグラフ・アニュアルエディション 2021」のダイアルの背景を解明してみようと思う。
この工場はもともと1923年に創業した「T.H.ミュラー」というダイアル製造会社であった。同社はかつてドイツとスイスのさまざまな時計ブランドにダイアルを供給。1950年代にはグラスヒュッテ・オリジナルの前身である東ドイツのGUB(グラスヒュッテ・ウーレンベトリーブ)にもダイアルを供給した実績があった。
やがて同社はスウォッチ グループ傘下となり、2012年には正式にグラスヒュッテ・オリジナルと合併し、専門のダイアル製造部門となったのである。
さらに2013年にはフォルツハイム中心部から少し離れた場所に設立された新工場に移転。万全の体制でグラスヒュッテ・オリジナルのダイアル製造を担っている。
この工場はグラスヒュッテから離れているとはいえ、フォルツハイムに伝わる高度な時計宝飾技術を背景とする豊かな技術の蓄積を持ち、優秀な人材を確保しやすいという好条件に恵まれている。加えて1950年代からグラスヒュッテ・オリジナルのダイアル製造を担当してきた実績があり、ストックされた、その時代のサンプルをベースとした新しいダイアルの開発がスムーズに行えるのも利点だ。
現行コレクションである「シックスティーズ」も、そんなフォルツハイムのダイアル工場に保管されていたかつてのサンプルにインスパイアされたモデル。また、今では時計界のスタンダードとなったグラデーション仕上げのダイアルも、50年代にこの工場が生み出したものがベース。つまりグラデーション・ダイアルの元祖はグラスヒュッテ・オリジナルといっても過言ではない。
この長い伝統に裏付けられた高度な技術から生まれた「シックスティーズ・クロノグラフ・アニュアルエディション 2021」のダイアル。それはドイツの職人魂が込められた逸品なのである。
完全に密閉された塗装ブースでスプレーガンを用いて塗料をダイアルに吹き付ける作業。ダイアルに仕様によっては塗装ではなくガルバニック処理(溶融めっき処理)によって着色する場合などもあり、この工場ではすべての加工が行える設備が整っている。
こちらは1950~60年代のサンプルの中に発見した、ブルーやブラックのグラデーション仕上げが施されたダイアル。当時からフォルツハイムのダイアル工場は、このような特殊な仕上げを得意としていたという。
1950~60年代のダイアル・サンプルが専用のホルダーにすべて整理・保管されている。特にこのシートに張り込まれたダイアルは、インデックスの一部に独特のアラビア数字が用いられており、現代の「シックスティーズ」の原点となったであろうものだ。
2013年、フォルツハイム郊外の工業地帯に移転したグラスヒュッテ・オリジナルのダイアル工場。グラスヒュッテの本社とオンラインで繋がり、新作ダイアルのデータが瞬時にこの工場に送られることで、試作や生産がスムーズに行う体制が整えられている。
構成・文:名畑政治 / Composition & Text:Masaharu Nabata
写真(製品):江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto
写真(ダイアル工場):堀内遼太郎 / Photos:Ryotaro Horiuchi
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※価格は2021年11月25日現在のものです。
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