SIHHはジュネーブ国際空港の横にある巨大な見本市会場「PALEXPO」にて開催される。会場内はブランドごとに巨大ブースが作られ、その内部を自由に演出するのだが、個人的にはボーム&メルシエ(BAUME&MERCIER)が好みだ。
エントランスをくぐると、そこはまるで別荘。窓の外にはデッキがあり、青い海がすぐ近くに見える。これはファブリックに風景写真を印刷しているに過ぎないのだが、ディテールまで作り込んでおり、光源の作り方も上手なので、フェイクだとわかっていても脳が騙される。大きなソファにゆったり座っているだけで、不思議と落ち着いた気分になってくるのだ。
なぜボーム&メルシエはこのようなブースを作っているのか?
彼らは現在「シーサイドリビング」というコンセプトを掲げている。海辺の別荘で暮らす満ち足り生活に寄り添うような、品の良い時計を作るというのが、ボーム&メルシエの戦略なのだ。
今年は「クリフトン(CLIFTON)」という新コレクションを発表した。今回のSIHHの中でモデルやラインのエクステンションではない、完全なる新作は、恐らくコレだけだろう。それだけボーム&メルシエが好調であるということだ。
さて肝心の「クリフトン」だが、ボーム&メルシエが得意としている過去のアーカイブを引用する方式を継続しており、今回は1950年製モデルをベースに作られた。
端正で上品な佇まいに仕上げており、いかにも高額品に見えるのだが、ゴールドケースであっても120万円。通常のSSモデルであれば20万円台という驚異のプライスレンジに納めている。
どんな時代であっても、コストパフォーマンスに優れた商品であれば確実に評価される。長年の歴史と積み重ねた伝統、誰からも愛されるデザイン、そしてこなれた価格を備えた「クリフトン」は、2013年のSIHHにおける"コストパフォーマンス大賞"であることは疑うべくもない。