リーマンショックや欧州の金融不安もあって、いわゆる時計メーカーの時計たちは、どれもが「勝てる勝負」に徹しているように見える。もちろん利益を追求するのが企業として正しい道である以上、それを大きな声では否定できないが、小さな声では不満も言いたくなる。
しかしその反動なのか、ハイ・ジュエラーたちが作る時計が元気だ。専業メーカー特有の"時計かくあるべし"というお仕着せがないため、クリエイションに制限を設けていない。そして頭の中に広がるイマジネーションを素直に形にしている(ようにしか見えない)ため、心惹かれるモデルが多いのだ。
その筆頭はヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)だろう。フランスを代表するハイ・ジュエラーではあるが、SIHHにおいては何をしてくるかわからない"飛び道具的"な立ち位置にあり、同社の新作を楽しみにしているという人は少なくない。
毎年予想以上の新作を用意してくるヴァン クリーフ&アーペルだが、2012年もその期待を裏切ることは無かった。詩的な世界を時計で表現する彼らの物語が新しい展開を見せたのだ。
注目の新作「ミッドナイト ポエティック ウィッシュ(MIDNIGHT POETIC WISH)」と「レディ アーペル ポエティック ウィッシュ(LADY ARPELS POETIC WISH)」は、一昨年に登場した時計「レディ アーペル ポン デ ザムルー(LADY ARPELS LE PONT DES AMOUREUX)」にて熱いキスをした二人のカップルが主役となる。
二人がパリの街(ノートルダム寺院とエッフェル塔)で互いに相手のことを愛しく想うという詩的なシーンを、オートマタとファイブミニッツリピーター、そして美しい工芸技法で再現する、見て聞いて楽しむ時計である。
さらにピアジェ製のムーブメントを搭載する薄型ドレスウォッチ「ピエール アーペル(PIERRE ARPELS)」も発表しており、高価なハイコンプリケーションからドレスウォッチまで幅広く、そして華のあるラインナップを作り上げている。