きらびやかなラグジュアリー・ブランドが多勢を占めるSIHHにおいては、数十万円という一般ユーザーにとってリアリティのあるプライスタグを付けた時計たちは、どうしても注目度は下がってしまう。
しかし2011年のジャンリシャール(JEANRICARD)は違った。90年代に登場し、"サファリ"というテーマを打ち出した「ハイランズ(HIGHLANDS)」が、メディアから好評を博し、結果として多くの男性誌で紹介されたのだ。
そして2012年の今年。その興奮冷めやらぬ中、新作として登場したのは…、またもや「ハイランズ」だった。
とはいえ全く同じではなく、汎用ムーブメントを搭載するモデルを20万円台で提供し、自社ムーブメントCal.JR1000を搭載するモデルは限定品としている。
代表であるマッシモ・マカルーソ氏(写真下)にこの戦略の意義を問うと、「ハイランズは非常に評判の良いコレクションとなったため、このモデルをきっかけに更にブランドの知名度を上げたい」というのが理由だという。
つまり名を上げた看板モデル「ハイランズ」を、多くの人に開放することが目的だったのだ。
これは来年からバーゼルワールドへと移行する事も、かなり影響しているだろう。SIHHでは自社ムーブメントで50万円台という価格帯は魅力だが、バーゼルにはその価格帯にライバルがとても多い。
ならば競争力のあるデザインや世界観をもつモデル「ハイランズ」に、さらに魅力的な価格帯を提示してライバルを出し抜こうという作戦は一理ある。
いずれにせよ、昨年の人気モデルが一層手に入れやすくなったというのは、朗報であることには間違いない。今年のジャンリシャールも"買い"である。