1846年スイス、ル・ロックルに創業したユリス・ナルダンの評価は、マリンクロノメーターによりすでに19世紀後半には確立していた。このことが当ブランドの現代に至る特性を決定づける。本年2012年の新作の詳細は各時計の紹介ページで述べるとして、まずユリス・ナルダンの基本特性を検討したい。
(1)精度の追求--マリンクロノメーター
マリンクロノメーターとは、航海中に自船位置を特定するための必須のナビゲーション装置である。ユリス・ナルダンは1846年から1975年にかけてスイス、ニューシャテル天文台発行のマリンクロノメーター精度証明書の4504枚中4324枚も取得。この精度追求の姿勢は本年の「マリンクロノメーター・マニュファクチュール(MARINE CHRONOMETER MANUFACTURE)」搭載のキャリバー118に発露した。
(2)複雑時計--天文時計の系譜
天才時計設計・技術者ルードヴィッヒ・エクスリン博士による1985年から1992年にかけて発表された「天文時計三部作」。この天球への想いは2009年の「ムーンストラック」へ、さらに本年の「クラシコ ルナ(CLASSICO LUNA)」へと継承されている。
(3)ストライキング・ウォッチとクロワゾネ--伝統技術へのこだわり
1989年発表のオートマタ(自動人形)付きミニッツリピーター「サンマルコ」と、海洋史に残る名船等を描く「クロワゾネ」コレクション。これらは後の時計界におけるオートマタやクロワゾネ・ブームの先駆けとなる存在で、航海技術発達の一端を担ったユリス・ナルダンの情熱が時計界を牽引したと言える。本年発表の「ソナタ ストリームライン(SONATA STREMLINE)」はこの ストライキング・ウォッチの系譜であり、クロワゾネの伝統は「マリンクロノメーター・マニュファクチュール」ローズゴールド・バージョンのホワイトダイアルに生きている。
高精度機械、複雑機構、伝統技法・・・様々な特徴を併せ持つユリス・ナルダンの伝統は、その創業以来、脈々と現代へ息づいている。