2009年のパネライ（PANERAI）は、他ブランドを差し置いて、最も正統な進化を遂げたといっていいだろう。2002年にインハウスムーブメントの開発に着手して以来、精力的に新キャリバーを製造してきたパネライだが、今年は＜Cal.P9000＞シリーズと称される三つの基幹キャリバーと、スプリットセコンド機能つきクロノグラフキャリバー＜Cal.2006＞を加えて一気にコレクションを拡充してきた。自社開発ムーブメントを発表することがさして珍しいトピックではなくなりつつある現在だが、パネライの＜Cal.P9000＞シリーズを搭載する「ルミノール 1950」の新コレクションが、3日間パワーリザーブや300m防水といった高スペックを堅持しながらも、価格をすべて100万円以下に抑えている点は、称賛に値する。ことに新規ユーザーにとっては、適正なプライスは魅惑的なファクターとなるに違いない。
　また、自らを＜パネリスティ＞と名乗る熱狂的なファンたち(おもに日本、ドイツ、中国などで組織されている)を陶酔させるであろう限定版「ラジオミール エジツィアーノ」も登場。1950年代のアーカイブを忠実に再現し、60mmもの大型ケースに納入した同モデルは、SIHHのカンファレンスに集まった関係者を沸かせるのに、充分なインパクトを放っていた。

　2009年にパネライが発表した4つの自社製キャリバーのうち、3針（秒針はスモールセコンド仕様）にデイト表示、という基本的な機能をそなえた＜Cal.P9000＞を搭載したモデル。洗練されたシルエットをもつ「ルミノール1950」ケースは、従来のドーム型に盛り上がったサファイヤクリスタル製の風防が、ベゼルからわずかにせり出す程度のフラットなものに変更された。これにより、機密性が増し300m防水を実現。また、2008年から登場した新しいブレスレットは、フィット感、仕上げの良さに加えて、ケース本体から簡単に取り外すことができるため、工具を使わずともユーザー自身で革ベルト等への交換できるのが嬉しい。旧来のダブルリンクのブレスとも互換性がある。
　 なお、アリゲーターストラップのモデル（Ref.PAM00312）は、税込み682,500円。高スペックの自社製ムーブメントを積んでいながら、非常に魅力的な価格設定だ。

文：越知絵里香　写真：板津亮

※表記は2009年2月現在のものになります。