Watch Person Interview vol.54 時代も技術も超越した シンプルでオネストなデザイン
基本的に同じムーブメントを搭載しながら2013年の『スペースクラフト』と新作『サブクラフト』はまるで別のものに見える。
「ふたつの作品には、それぞれに異なるストーリーがある。一方はオンリー・アングル、つまり直線的なエッジだけで構成された力強い飛行物体。もう一方はバイオでオーガニックなデザインのアンダーウォーター・クリーチャー(水中の小動物)。あるいは生きている小石みたいな感じだ」(シルベスタインさん)
たしかに、この新作を手にしていると、潜水艇というイメージから派生して、深海に生息する未知な生命体にも見えてきた。
2013年に発表された『スペースクラフト』のカーボン・モデル。すべてが直線で構成された個性的なフォルムを持ち、上面にはカーボン・ファイバーのパネルが嵌め込まれている。世界限定25本。3,800,000円(税別)
シルベスタインさんが実際に着用する2015年の新作『サブクラフト』。異形のタイムピースだが、実際に腕に装着すると、意外にもしっくりと馴染んで違和感はない。
「小動物を腕の上で飼うようなイメージもあるね。“かわいい”と言えば日本人にはわかるはず。ただ、ヨーロッパでこう表現すると、ちょっとコミカルすぎる。とにかく持つことで幸せを感じる時計です」(シルベスタインさん)
「それに、なんとなく触りたくなるフォルムでしょ? 時計は嗜好品である共に精密機械なので、あまり触らないほうがいいという考え方もある。でも、それを覆したかった。なぜなら時計は、とても個人的なアイテムなので、自分に近いものならいつも触りたくなるはず。価格は別にしてね。だからこのモデルは、もっとも触りたくなる時計であり、触った感触まで、すべてを考え抜きました。
また、作られた時代もわからない。1950年代の作品なのか2050年の作品なのか? 私はこのモデルを手にする人にはテクノロジーを忘れてもらいたい。他人は僕らのことをクレイジーというかもしれないけど、複雑さに対する親和性を求めた正直なデザインです。そして我々のブランドに何ができるのかを表現したかった」(マニュエルさん)
この有機的なデザインを実現するため追求したのは素材と仕上げだったという。
「軽くて革新的な素材を使いたかったので、ケース素材はグレード5のチタン。黒いモデルはPVD(Physical Vapor Deposition)加工によるもので、これはDLC(Diamond-like Carbon)よりチタンへの相性がいいからです」(エムシュさん)
「PVDを使うならチタンが一番良い。なぜならPVDの中にチタン素材が入っているからね。しかも、傷が目立ちにくいんだ」(シルベスタインさん)
「これは複雑だけど洗練されているミニマルなデザイン。その最終結果が複雑さを忘れさせるようなものであり、ユーザーフレンドリーなプロダクツです。
メカニズムもそうです。すぐに操作法がわかり、セッティングもやりやすい。アップルの製品が、その成功例のひとつですね。ですから、この時計を理解してくれるのはセンスのある人だと思うのです」(マニュエルさん)
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:堀内僚太郎 / Photo:Ryotaro Horiuchi
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