ブライトリングが掲げ示す、「プロフェッショナルのための計器」たる時計づくりの哲学。つまりすべてのモデル、すべての機能に必然性――ある種の専門家が任務を遂行する際に役立つ特殊スペック――が備わっており、あくまでもプロユースに適う時計しかつくらない、というブランドの姿勢が貫かれている。

  ラインナップのなかでも「スーパーオーシャン」シリーズを始めとしたダイバーズモデルが著名だが、それ以上に「クロノマット」「ナビタイマー」「エマージェンシー」各シリーズを始めとする、パイロットに向けてつくられた航空用モデルたちこそが、より強固にブランドイメージと結び付いているといえるだろう。そして、それはブライトリングの出自そのものと無関係ではない。
 ブライトリングは、創業者レオン・ブライトリングが1884年、スイス・サンティミエに時計工房を開いたのが始まりだ。彼は、時計づくりを志した当初から経過時間の計測機能を備えた時計に大きな関心を寄せており、まだ市場では珍しかったストップウォッチ付き懐中時計、つまりクロノグラフを中心に製造を進め、次第に工房を発展させていった。晩年、彼はパイロット用の小型クロノグラフの製作にも着手するが、完成を待たずに他界してしまう。

  しかしながら、レオン・ブライトリングの没後も、後継者によって複雑な計測機能付きの時計の開発は継続され、さらに技術研鑽を重ねていった。こうしてタキメーター装備のクロノグラフやスプリットセコンド装備のクロノグラフなど、ブライトリングは実用的な計測が可能なタイムピースを次々と生み出し、やがて実績が認められた同社は、1936年に航空機用のコックピット・クロックをイギリス軍に供給する契約を結んだ。

  そして1939年、ドイツで世界初のジャンボジェット「ハインケルHe178」が大空を飛んだことを皮切りに、航空会社による大量輸送時代が幕を開けると、ブライトリングはその流れに呼応するように1942年、創業当時から愚直なまでにこだわってきたクロノグラフの技術を結集して、回転計算尺搭載のパイロット用クロノグラフ「クロノマット」を完成させたのである。
  航空産業の黎明期、という激動の時代に誕生した「クロノマット」は“航空クロノグラフ”という腕時計の新しいジャンルを築き、同時にブライトリングのアイデンティティに深く根差していった。そして1984年に誕生する続機に「クロノマット」の名称が再び使用され、ブライトリングのフラッグシップモデルとして今もなお大人気を博している。

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CHRONOMAT
モデル名:クロノマット
Ref:Ref.A156B19PA
ケース径:43.70mm
ケース厚み:17.10mm
ケース素材:SS
防水性:300m
ストラップ:パイロットブレスレット/レザーストラップ/ダイバープロストラップ
ムーブメント:自動巻Cal.13、毎時28,800振動、約42時間パワーリザーブ、25石、C.O.S.Cクロノメーター認定
仕様:クロノグラフ(1/4クロノグラフ秒針、60秒計、30分計、12時間計)、タキメーター表示、デイト表示、スモールセコンド、逆回転防止ベゼル、ねじ込み式リューズ、
夜光インデックス・針、両面無反射コーティング・ドーム型サファイヤクリスタル
価格:640,500円(税込)
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  “航空用クロノグラフ”というジャンルの磐石を築いた、初代「クロノマット」のアイデンティティは、その後リリースされた「ナビタイマー」や「クロノマチック」に引き継がれた。
  時は過ぎ1979年。クォーツ式の時計が世界を席巻し、スイスの時計業界が壊滅的な打撃を受けていた頃である。ブライトリングの経営を引き継いだアーネスト・シュナイダーは、新プロジェクトに社運を賭けようとしていた。それは、イタリア空軍のアクロバティックチーム「フィレッチェ・トリコローリ」のオフィシャルクロノグラフを決めるコンペに勝つために、これまでにない、まったく新しい機械式クロノグラフをゼロから開発すること。そんな無謀ともいえる試みによって、アーネスト・シュナイダーは機械式時計の栄華を取り戻すことを画策したのであった。そして、実際にパイロットたちの意見を参考にしながら腐心してつくり上げたクロノグラフは、早い段階からのブライトリングと航空業界との蜜月関係を象徴する記念碑的なモデルの名を復活させ、1984年に新生「クロノマット」として産声を上げたのである。このモデルは彼のもくろみ通り、ブライトリングの立て直し、そして機械式時計の復興に大いに貢献した。

  「クロノマット」は誕生から20年の間に、数多くのヴァリエーションが追加され、実に4回ものリニューアルが行われている。同モデルと人気を二分する「ナビタイマー」シリーズがクラシカルな意匠を伝承するのに対し、時代に合わせて常に正統進化を続ける「クロノマット」は、2004年にモディファイされた現行モデルによって、完全体の様相を呈したといえるだろう。ケースサイズを従来の39mmから43.7mmに拡大してマスキュリンな印象に仕上げ、さらにプッシュボタンやラグ、ライダー・タグの形状などすべてのディティールに改良の手を加えて、滑らかに孤を描く曲線に仕上げていった。そして何より、特筆すべきはその美しいダイヤルだ。仔細に観察しないと分からないが、バーインデックスは立体的なだけではなく、中心部に向かって穏やかにカーブがつくように磨き上げられ、さらにダイヤルのセンターには中心に同心円状のパターンが刻まれたギロッシェ加工が施されるなど、手に取った者にしか気付かないような極上の仕上げが随所になされている。
  「クロノマット」は、航空時計として古来のアイデンティティを体現していながら、300mの防水性を実現するために、ねじ込みロック式セキュリティ・プッシュボタンを採用するなど、同社が成功を納めた最先端技術が最も早く反映されるフラッグシップモデルでもある。だからこそ、ブライトリングの出自から現在までの歩みを雄弁に物語っており、ブランドの魅力を味わい尽くすことのできる至極の1本だといえるのだ。

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